お客様は“紅葉”を見て、あなたの商品を思い出す。
朝、サロンを開けるたび、カレンダーの白いマス目が目に刺さる。
予約表の空白が、少しずつ広がっていく。秋の風が吹くたびに、
私の心の中も、少しずつ冷たくなっていった。
ある日、店の前の木が赤く色づき始めていることに気づいた。
風に揺れる葉が、太陽の光を受けてきらめいている。
その一枚が地面に落ちた瞬間、ふと頭をよぎった。
「あの人も、今ごろこの空を見てるのかな。」
そう思ったら、不思議と胸の奥が熱くなった。
最近、投稿しても反応が薄い。
LINEの既読は増えるのに、予約は動かない。
“このまま冬を迎えるのが怖い”──
そんな焦りを抱えながら、去年の投稿を見返していた。
派手なキャンペーン、限定割引。
そのどれもが、いま見ると“自分を守る言葉”だった。
でも、一つだけ違う投稿があった。
「外に出たら金木犀の香り。
去年もこの香りの中で、大切なお客様と笑っていました。」
その投稿だけが、驚くほどコメントをもらっていた。
思い出した。
あの時、私は“売るため”じゃなく、“感じたまま”を書いた。
そしてその日、久しぶりに予約が入った。
お客様は、キャンペーンよりも“人の心の温度”を覚えている。
紅葉を見て、ふと思い出すのは“商品”じゃない。
その季節にかけてもらった言葉、
感じた香り、笑い声。
マーケティングの本には書いていない。
けれど、季節は最強の記憶装置だ。
人は五感のどこかに「誰かと過ごした秋」を刻んでいる。
だから、あなたが語る秋のひとコマが、
誰かの心に“再生ボタン”を押すことがある。
紅葉を見て、あなたを思い出す人がいる。
その瞬間、売り込みではなく“つながり”が生まれる。
完璧な言葉はいらない。
大切なのは、“感じたままを切り取る勇気”。
たとえば、
「サロンの前の落ち葉を掃いていたら、金木犀の香りがした。」
その一文だけで、人はあなたの世界に引き込まれる。
静けさの中にある“感情の余白”が、信頼を生む。
だからこそ、発信を止めてはいけない。
沈黙は、記憶の消去だ。
季節が巡るたびに、思い出してもらえる存在になるには、
“販促”より“物語”を残すこと。
紅葉は、手放す美しさの象徴。
その赤は、誰かに届いたあなたの温度でもある。
今年の秋、あなたはどんな色を語りますか?
あなたの言葉で、その色を見せてください。