年末に焦る人の共通点は、“今の10通”を書いてないこと。
夜の静けさが、やけに重く感じた。
カレンダーの数字は「10月」。
けれど、心の中ではもう「12月の焦り」が始まっていた。
──売上が動かない。
──予約が入らない。
──投稿をしても、反応が薄い。
誰も悪くない。
でも、この沈黙が怖かった。
何も起こらない10月ほど、恐ろしい季節はない。
思い出す。
数年前のあの冬も、同じように焦っていた。
12月に入ってから、急に割引を始め、
「あと○日で終了!」なんて言葉を並べた。
けれど、お客様の心はもう離れていた。
DMを送っても既読スルー。
メールを出しても開かれない。
キャンペーンを打っても反応はゼロ。
その時、私の中でハッキリと分かった。
『信頼は、12月の割引では買えない。』
それから私は、10月に“10通のメール”を書くようにした。
売り込むためじゃない。
「思い出してもらう」ために。
たとえば──
「朝、指先が冷たくて、湯呑みに手をかざした時の小さな安心」
「風が乾き始めると、肌より心の方が先に乾く気がする」
そんな、なんてことのない話。
けれど、それに返信が届いた。
“読んで泣きました”
“最近、気持ちが落ちてたけど少し元気出ました”
“また予約したいです”
そのとき初めて気づいた。
教育メールは“教えること”じゃない。
“つながりを育てる時間”なんだ。
10通の中で、読者の心は少しずつ変わっていく。
警戒 → 共感 → 信頼 → 応援。
それは、冬の地面の下で根が張っていくようなものだ。
でもほとんどの人は、花を焦って咲かせようとする。
10月にキャンペーン、11月に割引、12月に値下げ。
だけど、根を張らない花は、
霜が降りた夜に一瞬で枯れる。
10通のメールを書ける人は、根を育てる人。
書かない人は、焦って花びらを散らす人。
どちらになるかは、今この瞬間の指先が決めている。
年末の焦りは、10月の沈黙の報いだ。
そして、年末の穏やかさは、10月の言葉の貯金だ。
だから私は、今日も1通だけ書く。
売り込む言葉ではなく、
“声が届く人”を思い浮かべながら。
「信頼は、積み上げるものではなく、染み込ませるもの」
静かな夜に、一人ひとりの心へ種をまく。
それが、年末の光になると知っているから。