【危険】その商品名、あなたを“安く見せている”かもしれません。
「安く見えているのは、値段じゃなかった。」
そう気づいたのは、11月のある夜。
閉店後の静かなサロンで、売上表を見つめていたときだった。
予約は入っている。広告も出している。
でも、なぜか“選ばれない”。
鏡越しに見た自分の表情が、妙に疲れていた。
──そのとき、心の奥に浮かんだ言葉があった。
「この名前じゃ、誰の心にも残らない。」
翌朝、私はメニュー表を開いた。
「リラックス整体コース」
「デトックスリンパケア」
「全身トリートメント」
何の違和感もなかった。
だけど、“印象がどこか薄い”。
SNSを開けば、似たような名前が無数に並んでいた。
「私は、その中の一つになっていたんだ。」
お客様にこう言われたことがある。
「〇〇さんのところ、すごく丁寧ですよね。でも…なんか他と違いがわかりづらくて。」
その“でも”が、私の胸に刺さった。
彼女は悪気がなかった。
けれど、その一言は、私の数ヶ月の努力を
一瞬で“平均”というラベルに変えてしまった。
思えば、私はいつも「わかりやすい名前」を選んできた。
でもそれは、お客様のためではなく、
“自分の安心のため”だった。
「伝わらないリスクを避けたくて、
安全な言葉で包んでいたんだ。」
その夜、ノートを開いて考えた。
「お客様が選びたくなる名前って、どんな言葉だろう?」
思い出したのは、数ヶ月前に離れていった常連さんのこと。
何年も通ってくれていた人が、突然「別のサロンに行くね」と言った。
理由を聞く勇気がなかった。
後日、その人のSNSを見た。
「最近行ってる“美循環サロン”、最高…!」
“美循環”──
その一言に、胸がざわついた。
技術は負けていない。でも、
言葉の印象がすべてを奪っていった。
私は一晩中、名前を考え続けた。
そして決めた。
「デトックスリンパケア」はもうやめよう。
翌週、メニュー名を変えた。
“深層リンパメルト”──
「体が溶けるように軽くなる」感覚をイメージした言葉。
正直、最初は怖かった。
「変な名前だと思われないかな?」
でも、不思議なことが起きた。
投稿した翌日。
ひとつのDMが届いた。
「名前を見て、なんか気になってしまって。」
その人はそのまま90分コースを予約した。
たった一つの“名前の変更”が、静かに結果を動かした。
それ以来、私は「言葉の怖さ」を信じるようになった。
名前は、価格以上に人の心理を動かす。
“技術”ではなく、“印象”で選ばれる時代に、
名前がブランドのすべてを握っている。
ただ、これはブランディングではなく“信頼の問題”でもある。
「お試し」「キャンペーン」「初回限定」──
これらは短期的な反応を取るには便利だ。
でも、無意識のうちに“安い人”という印象を刻み込む。
安さを売りにすると、信頼が先に消える。
一度“価格の人”として見られると、
その印象はなかなか戻らない。
でも、名前を変えないままでいることは、
信頼を削り続けることでもある。
名前は、最初の3秒で「この人を信じたい」と思わせる鍵になる。
その力を軽く見てはいけない。
あなたの商品名は、
あなた自身の印象を代弁している。
私たちは価格を変える前に、
“言葉”を変えるべきかもしれない。
そして、その言葉が持つ“温度”を、
もう一度感じてみてほしい。
その響きに、あなたの“誇り”は宿っていますか?