年末が近づくと、今年もまた胸の奥がざわつき始める。
まるで…サロンの空気そのものが冷え込んでいくみたいに。

スマホは沈黙したまま。
予約カレンダーの空白が、未来の不安をじわじわと広げていく。

あの日、私は心の中でつぶやいた。
「来年も…このままなのかな」

言葉にした瞬間、それが現実になりそうで怖くて誰にも言えなかった。

でも、沈黙していても現実は静かに迫ってくる。

年末の見込み客は、
・エネルギー切れ
・判断力の低下
・やり残しの罪悪感
この3つの感情に支配される。

だから、売り込みの言葉は届かない。
届くのはたったひとつ。

“来年の私を軽くしてくれる提案かどうか”

私はそのことに気づかず、
「空いてます」「キャンペーンです」
そんな言葉を送ってしまった。

反応は…ゼロだった。

そんな私に、ある先輩が言った。

「年末の1通は、未来の扉をそっと開く“鍵”なんだよ。
　売るんじゃなくて、来年の安心を渡すんだ。」

私はハッとした。

“安心”を渡す文章なんて、考えたこともなかった。

でも、言われてみれば心当たりがあった。
自分自身、疲れているときに読みたいのは商品説明ではなく、

「来年こそ、もっと楽に生きられるよ」
という未来の気配だった。

試しにこう書いた。

「今年、どこに一番時間と心を使いましたか？」
「来年を軽くするために、今できる小さな見直しは何ですか？」
「一度立ち止まりたい方へ、安心して深呼吸できる時間を作りました。」

送った瞬間の反応はゼロ。
でも、3日後。
続けて4人から予約が入った。

あのとき私は震えた。

“遅れて返ってくる反応は、成功の証拠なんだ”

人は“未来の自分”と向き合うのに時間がかかる。
だからこそ、ゆっくり浸透していく文章が強い。

私は気づいた。

年末は「動かない季節」じゃない。
“未来と向き合う季節”だった。

そして、未来をそっと灯す文章は、
売り込みをしなくても最後まで読まれる。

読者が勝手に、自分の未来を想像してくれるからだ。

商品ではなく、
「来年の後悔しない私」
を手渡す文章。

それが年末の強さだった。