あなたの「オリジナリティ」は、実はただの迷惑行為かもしれない。独りよがりな治療家が陥る「情熱の空回り」という致死的な病

2026/01/06
【浪費】溶け落ちる卓上時計

数年前の、ある蒸し暑い夏の夜。 僕は、スマホの画面を見つめながら、全身の血が逆流するような感覚を味わっていた。

「穴があったら入りたい」という言葉があるが、そんな生易しいものではない。 僕はその時、自分の存在ごと消えてしまいたいと本気で願っていた。

当時の僕は、マーケティングを学び始めたばかりで、ひどく傲慢だった。 世の中に溢れている「売れる文章テンプレート」や「成約の型」を、心底軽蔑していたのだ。

【断絶】絡み合う赤い糸の壁

「あんなものは、魂のない詐欺師が使う手口だ」 「僕とクライアントの信頼関係は、借り物ではない『僕自身の生の言葉』でしか紡げない」

そう、盲信していた。 その青臭い正義感が、相手にとってはただの「暴力」になり得るなんて、微塵も気づかずに。

ある日、僕は起死回生を狙った新しい高額講座を企画し、既存のクライアントに向けて案内メールを送ることにした。 「絶対に成功させたい」 その一心で、僕は他の業務をすべてストップし、丸3日間、パソコンの前に張り付いた。

創業の想い、クライアントへの感謝、業界への提言、そして溢れんばかりの情熱……。 書いては消し、深夜まで推敲を重ねたそれは、もはや案内文というより、「魂の叫び」を書き殴った長編小説のようだった。

書き上げた時、僕は深夜のオフィスで一人、震えていた。 「これなら絶対、みんなの心に響く。涙する人だって出るかもしれない」

確信を持って、送信ボタンを押した。 僕は興奮して、通知が鳴り止まなくなるのを想像していた。

……しかし。

【発見】発光する青写真(ブループリント)

1時間経っても、スマホは沈黙を守ったままだ。 3時間経っても、画面は黒いままで、ピクリとも反応しない。 部屋のエアコンの音だけが、やけに大きく聞こえる。

翌朝になっても、申し込みは「ゼロ」だった。

丸3日だ。 僕の命とも言える72時間を費やした結果が、ゼロ。 その間、僕は施術をしていない。売上も立っていない。 ただ時間をドブに捨てただけだ。

それどころか、唯一届いた通知は、長年付き合いがあり、最も信頼していた常連のクライアントからのメールだった。 「きっと感想を送ってくれたんだ。長文で感動したと言ってくれるはずだ」 僕は縋るような思いでメールを開いた。

そこに書かれていたのは、あまりにも残酷で、しかしこの上なく正直な言葉だった。

「先生、すみません。何度も読み返したんですが、メールが長すぎて、結局なにが言いたいのか分かりませんでした。これ、私に関係ある話ですか?」

悪意はなかった。純粋な困惑だった。 だからこそ、鋭利なナイフのように僕のプライドを切り裂いた。

僕が「魂を込めた傑作」だと思っていたものは、受け手にとっては「読みづらく、時間を奪うだけの、迷惑な独り言」でしかなかったのだ。 僕の大切にしていた「オリジナリティ」の正体は、相手の脳に無駄な負荷をかける、醜いエゴの塊だった。

想像してみてほしい。 もし、これが僕の治療院の経営が火の車だった時なら? もし、僕が病気で倒れ、病室のベッドからこの一通のメールで家族の食い扶持を稼がなきゃいけない極限状態だったら?

僕は、自分の「こだわり」のために、自分と家族を殺すところだったのだ。 3日間もかけて、何の成果も生まないゴミを作り出した。 その事実は、労働集約型のビジネスモデルで生きる僕たちにとって、死刑宣告に近い。

傷つき、打ちのめされた僕は、次のメールで、あれほど毛嫌いしていた「穴埋め式のテンプレート」を、プライドを捨てて使ってみた。 自分の感情を押し殺し、型通りに淡々と事実とベネフィットを並べただけの、自分では「無味乾燥」に思える、ロボットのような文章だ。

作成時間は、わずか10分。

送信ボタンを押す指は震えていた。 「こんな冷たい文章で、人が動くわけがない。僕は魂を売ったんだ」

【覚悟】整えられた道具と朝の光

すると、どうだろう。 送信して10分後、スマホが震えた。 「申し込み」の通知だ。

その後も、「分かりやすかったです」「こういうのを待っていました」という反応が続々と届き、講座は瞬く間に満席になった。

僕はその時、画面の前で泣いた。 嬉し涙ではない。自分の愚かさへの悔し涙だ。

僕は痛感した。 「相手を思いやるとは、自分の熱い想いをぶちまけることではない。相手が『考えなくて済む』ように情報を整理して渡してあげることこそが、本当の優しさなんだ」と。

私たちは、治療家だ。 患者さんの身体を治す時、オリジナルのめちゃくちゃな手技を使ったりはしない。 解剖学に基づいた、正しい「型」と「手順」があるからこそ、最短で治せる。それがプロの仕事だ。

なぜ、文章になると、それを忘れてしまうのか? なぜ、マーケティングになった途端、地図を持たずに樹海に入ろうとするのか?

僕が今、「穴埋め式文章型」を強く推奨するのは、かつての僕のように、あなたが**「無駄な情熱の空回り」**で傷つくのを防ぎたいからだ。 そして何より、あなたの貴重な時間を、一円にもならない「独り言」の作成に浪費してほしくないからだ。

あなたが倒れたら、収入はゼロになる。 僕たちの代わりはいない。 そんな綱渡りの状況で、自己満足の「ポエム」を書いている暇など、僕たちの人生には1秒たりとも残されていないはずだ。

型は、あなたの想いを殺すものではない。 あなたの想いが迷子にならず、ちゃんと相手の心臓に届くようにするための、先人たちが血を流して舗装してくれた「優しさの高速道路」なのだ。

その道を歩くことを、恥じる必要なんてない。 むしろ、あえてイバラの道を選んで野垂れ死ぬことの方が、あなたを待っている患者さんへの裏切りだ。

さあ、つまらないプライドという名の重りを、今すぐ捨てよう。 泥臭く、しかし確実に、相手に「伝わる」道を選ぼう。

それが、プロフェッショナルとしての、生き残るための唯一の流儀だ。

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    黒岩倖光(くろいわ ゆきみつ)

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