「新メニュー追加」は緩やかな自滅行為? 9割の治療家がハマる“働き地獄”の正体

2026/02/02
【深刻化:職人の鎖】酷使された美しい「手」

深夜の治療院。 最後の一人のカルテを書き終え、ボールペンを置いた瞬間。

指先が、微かに震えていることに気づく。

使いすぎた筋肉の痙攣ではない。 これは、恐怖だ。

パソコンの画面には、書きかけのホームページ修正画面。 「産後骨盤矯正コース」 「自律神経調整・特別プログラム」 「深層筋リリース・オプション」……。

きらびやかな新メニューの数々。

私たちは、これを「経営努力」だと信じている。 売上が伸び悩んだ時、患者さんのリピートが落ちた時、 真面目で、患者さん想いのあなたは、決まってこの行動に出る。

「もっと、新しい武器を手に入れなければ」

週末のセミナーに通い、数十万円を払って新しい手技を学び、それをメニュー表に書き加える。 そうやって必死に学び続けるあなたの背中は、本当に美しい。

治療家としての誇りに満ちている。

だが、あえて残酷な真実を言おう。

【危機:不在の証明】冷たい光が差す、主のいない施術室

あなたが今夜やっているその「メニューの追加」は、経営努力ではない。 それは、「緩やかな自滅行為」だ。

あなたは今、自分で自分の首を絞めるロープを、丁寧に編み上げているに過ぎない。

なぜか?

メニューを増やすということは、 あなたの「肉体」への依存度を極限まで高めることと同義だからだ。

新しいコースを作れば、当然、説明が必要になる。 予約の管理は複雑になり、準備の手間は増え、頭の中は常に段取りで埋め尽くされる。

そして何より残酷なのは、 その新メニューを提供できるのは、世界でたった一人。

「あなたしかいない」

という事実だ。

私たちは職人だ。 「先生じゃなきゃダメなんです」と言われることに、麻薬のような快感を覚える生き物だ。

しかし、その快感の裏側で、確実に進行している病魔がある。

それは、 「あなたが倒れたら、その瞬間にすべてが瓦解する」 という、あまりにも脆弱な構造だ。

想像してみてほしい。

ある朝、目が覚めて、体が鉛のように動かない日を。 あるいは、不慮の事故で、その黄金の腕が使い物にならなくなる日を。

その時、あなたが必死に増やしてきた「豊富なメニュー」は、一体何の役に立つだろうか?

何も、してくれない。 誰一人として、救ってはくれない。

あなたの自慢のメニュー表は、ただの「紙切れ」に変わる。 予約台帳に並んだ名前は、すべて「キャンセルの電話を入れなければならない相手」へと変わる。

あなたが寝込んでいるベッドの枕元で、スマホが鳴り続ける。

「先生、今日は開いてないんですか?」 「痛くてたまらないんです、助けてください」

あなたは、その着信画面を見つめながら、絶望的な無力感に打ちひしがれることになる。

「私が動かなければ、1円も入らない」 「私が触れなければ、誰も治せない」

増やせば増やすほど、その事実は重くのしかかる。

あなたが作り上げたのは、繁盛する治療院ではない。 「あなたという動力源が止まれば即座に墜落する飛行機」だったのだ。

【転機:届く光】深夜の患者を救う「デジタルな分身」

それでも、多くの治療家は止まらない。 不安をかき消すために、また新しい手技を探しに行く。 「もっと凄い技術があれば」と、ゴールのないマラソンを走り続ける。

これが「足し算の呪縛」だ。

だが、本当に賢い治療家たちが、裏でこっそりと始めている「引き算」の経営を知っているだろうか?

彼らは、メニューを増やさない。 むしろ、減らしている。

その代わりに彼らが作っているのは、 「自分がいなくても患者さんを治せる仕組み」だ。

「そんな馬鹿な。手を使わずに治すなんて、治療家への冒涜だ」

そう思っただろうか。 かつての私もそうだった。 汗をかき、指を痛め、自分の命を削って施術することこそが、誠実さの証だと信じて疑わなかった。

だが、冷静に考えてみてほしい。

患者さんが求めているのは、あなたの汗ではない。 「痛みのない生活」「不安のない明日」だ。

あなたが施術をしている1時間。 それは素晴らしい時間だ。 だが、患者さんが本当に孤独で、不安で、痛みと戦っているのは、家に帰ってからの「残りの167時間」ではないか?

その時間に、あなたの手は届かない。 しかし、あなたの「知識」なら届く。 あなたの「声」なら届く。

「先生、家でどうすればいいですか?」

そう聞かれた時、口頭でさらっと説明して終わりにしていないだろうか。 そのアドバイスは、患者さんが玄関を出た瞬間、風に消えている。

賢い治療家たちは、その「消えていくアドバイス」を、「処方箋(資産)」に変えている。

動画に撮り、PDFにまとめ、音声に残す。 「自宅でできる痛み緩和ガイド」 「再発を防ぐためのモーニングルーティン動画」

彼らはそれを、施術とは別の「持ち帰れる治療」として患者さんに手渡している。

驚くべきことに、患者さんはそれを喜ぶ。 「先生が家にいてくれるみたいで安心する」と。

そして、そのデジタルな商品は、院長が寝ている間も、家族と旅行に行っている間も、患者さんの痛みを和らげ、そしてチャリン、と収益を生み出し続ける。

これは「手抜き」だろうか? いいや、これこそが本当の意味での「24時間体制の治療」だ。

そして何より、この仕組みこそが、あなた自身を救う唯一の命綱になる。

【結末:新しい朝】鎖から解き放たれた穏やかな時間

あなたがもし明日倒れても、あなたの分身である動画やテキストが、患者さんの元へ届く。 「先生は休んでいるけれど、ちゃんと私のことを気にかけてくれている」

その信頼は途切れない。 収入も、完全には途絶えない。

その安心感があるからこそ、あなたはゆっくりと休養し、また万全の状態で治療現場に戻ることができる。

今、手元のメニュー表を見直してほしい。 そこに並んでいるのは、「あなたが労働しなければ価値にならないもの」ばかりではないだろうか。

もしそうだとしたら、あなたは経営者ではない。 自分の城に閉じ込められた、高給取りの囚人だ。

牢屋の鍵は、実はあなたのポケットに入っている。

あなたが毎日、患者さんに語りかけているその言葉。 無意識に繰り返しているそのアドバイス。

それが、あなたを自由にする「資産」の原石だ。

新しい手技を学びに行く前に、一度立ち止まって考えてみてほしい。

これ以上、自分の体に鞭打って、メニューという名の鎖を増やす必要があるのか。 それとも、その鎖を断ち切り、あなたがいなくても回り続ける「設計図」を描き始めるのか。

天井のシミを数えるような夜が来る前に、決断しなければならない。

あなたの手は、自分を縛るためにあるのではない。 誰かを、そして何よりあなた自身を、自由にするためにあるのだから。

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    黒岩倖光(くろいわ ゆきみつ)

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