「パソコンは埃を被っている」60代の院長が、たった一枚のQRコードを見せるだけで予約管理を全自動化させた話。ITアレルギーのあなたにこそ知ってほしい、"裏側"の真実。

2026/01/19
【転機】一枚のカードが切り開く未来

「私には無理だよ。スマホだって、LINEと電話くらいしか使えないんだから」

その先生は、申し訳なさそうに笑いながら、施術ベッドの横にある事務机を指差した。 そこには、購入してから数回しか開かれていないであろう、うっすらと白く埃を被ったノートパソコンが鎮座していた。

キーボードの隙間には埃が溜まり、電源コードがどこにしまってあるのかさえ定かではない。 まさに、インテリアと化した鉄の塊。

60代、治療家歴35年。 彼の無骨で温かい指は、人間の筋肉の些細なコリを見つけることには長けているが、キーボードの上を滑らかに走るようには作られていない。

「先生、もし明日、その腰が限界を迎えて倒れたら、誰がこの電話に出るんですか?」

私の問いかけに、彼は沈黙した。 部屋の隅にある固定電話が、まるで時限爆弾のように、ジリジリと音を立てているように見えた。

彼も分かっていたのだ。 自分の体力が、かつてほど無限ではないことを。 そして、自分が動けなくなった瞬間、この院の収入が「ゼロ」になり、家族の生活が脅かされることを。

【解放】見えない「小人」たちの働き

それでも、彼は動けなかった。 「IT」「システム」「自動化」。 それらの言葉が持つ、冷たくて難解な響きが、彼のような職人肌の人間を拒絶しているように感じていたからだ。

「新しいソフトを覚えるなんて、もう脳みそがついていかんよ」

そう嘆く彼に、私はこう言った。 「先生、パソコンは開かなくていいです。キーボードも触らなくていい。ただ、これを患者さんに見せることだけ、できますか?」

私が手渡したのは、一枚のラミネート加工されたカード。 そこには、QRコードが一つだけ印刷されていた。

「これを、会計の時に『次回からはここから予約できますよ』と言って見せるだけです。それ以外は、何もしないでください」

彼は狐につままれたような顔で、そのカードを受け取った。

それから一週間後。 私のスマホに、彼から興奮した様子の電話がかかってきた。

「黒岩さん、これは一体どういうことだ?」

彼は声を震わせていた。

「昨日、私は一日中施術をしていて、電話には一度も出られなかった。休憩時間に折り返そうと思っていたんだが…」

彼は息を飲んだ。

「予約表が、全部埋まっていたんだよ。私が誰とも話していないのに」

種明かしは簡単だ。 彼が患者さんにQRコードを見せたその瞬間から、彼の背後では「優秀なクローン(デジタルの分身)」が働き始めていたのだ。

患者さんがスマホでQRコードを読み込む。 すると、彼のクローンがLINE上で愛想よく挨拶し、空いている予約枠を提示し、患者さんの希望を聞き、予約を確定させ、カレンダーに書き込む。

まるで、見えない小人たちが、彼のためにせっせと働いているかのように。 この一連の作業は、深夜2時だろうが、彼が施術に集中していようが、関係なく行われる。 しかも、「0秒」で。

【真実】罪悪感からの解放と安堵

彼が恐れていた「複雑な操作」など、どこにも存在しなかった。 彼がやったのは、今まで通り患者さんと向き合い、最後にカードを見せただけ。 アナログな動作が、デジタルのスイッチを押したのだ。

さらに驚くべきことが起きた。 「機械なんかに任せたら、味気なくて患者さんが離れていく」 そう懸念していた彼の元に、長年の常連さんからこんな声が届いたのだ。

「先生、予約しやすくなったね! 実はいつも電話する時、『先生、今休憩中かな』『忙しい時に悪いな』って罪悪感があったの。でもこれなら、夜中でも気兼ねなくポチッとできるから嬉しいわ」

その言葉を聞いた時、彼はハッとしたという。

人間は、疲れる。 忙しいと、どうしても電話の声が早口になったり、対応が雑になったりする。 折り返しの電話を忘れることだってある。

しかし、システム(クローン)は違う。 いつだって、最も機嫌が良く、最も丁寧な言葉遣いで、即座に対応してくれる。 患者さんの「邪魔しちゃ悪いな」という遠慮(罪悪感)を取り除いてくれる。

「私が対応するより、よっぽど患者さんに優しいじゃないか…」

彼は苦笑いしながら、そう漏らした。 その横顔からは、先週までの「将来への不安」が消え、経営者としての余裕が生まれていた。

【覚醒】深夜2時の「経営者」の証

先生、あなたも「ITアレルギー」を言い訳にしていないだろうか? パソコンが苦手だから、自分には関係ない話だと、耳を塞いでいないだろうか?

それは大きな間違いだ。 テクノロジーは、あなたを苦しめるためにあるのではない。 職人であるあなたが、職人の仕事(施術)だけに集中できるようにするために存在しているのだ。

想像してみてほしい。

あなたが泥のように眠っている深夜2時。 静まり返った寝室で、枕元のスマホが「ブブッ」と小さく震える。 その光が、暗闇を一瞬だけ照らす。

画面には「予約確定」の通知。

あなたが夢を見ている間に、来月の売上が確定している。 その通知画面こそが、あなたが「肉体労働者」から、真の「経営者」へと生まれ変わった証明書だ。

埃を被ったパソコンはそのままでいい。 難しい専門用語も覚えなくていい。

ただ、「自分の分身を持つ」という決断をするだけでいい。 そうすれば、明日からあなたの治療院は、24時間365日、眠らない要塞へと変わるのだから。

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    黒岩倖光(くろいわ ゆきみつ)

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