「週に1回、1時間」施術しただけで、患者さんを救った気になっていませんか? 残りの「167時間」、あなたが彼らを自宅で“放置”している間に起きている残酷な真実について

2026/01/24
【放置された日常】 冷えたキッチンと、痛む腰

深夜、日付が変わる頃。 最後のカルテを書き終え、重たいシャッターを降ろす音が、静まり返った商店街に響く。

院に戻り、ひとり、レジの締め作業をする。 ジャーナルに印字された今日の売上数字。 悪くない。今月の支払いも、まあなんとかなるだろう。

けれど、ふとした瞬間。

施術で酷使して熱を持った自分の右手首をさすったとき。 あるいは、腰に鈍い痛みを感じたとき。 背筋が凍るような、冷たい感覚に襲われることはないだろうか。

「もし明日、私の体が動かなくなったら?」

腱鞘炎が悪化して、手技ができなくなったら。 ぎっくり腰で、ベッドの横に立てなくなったら。 あるいは、予期せぬ病で、長期の入院を余儀なくされたら。

答えは、残酷なほどシンプルだ。 その瞬間、このレジの中身は「ゼロ」になる。

私たちは、それを「職人の誇り」という美しい言葉でコーティングして、直視しないようにしている。 「私の技術を求めて、患者さんが来てくれる」 それは素晴らしいことだ。治療家として、これ以上の喜びはない。

しかし、経営者としての視点で見れば、これほど脆(もろ)く、危ういビジネスモデルはない。

【届かない救い】 施術ベッドの上の「空虚」

自分という人間が、常に動き続け、エネルギーを燃やし続けなければ、明かりが消えてしまう発電機。 止まることが許されない、孤独なランナー。 それが、私たちの院の正体だ。

だから、必死になる。 その不安を打ち消すために、さらに技術を磨き、セミナーに通い、一人でも多くの患者さんを救おうとする。

「先生のおかげで、本当に楽になりました。ありがとう」

その言葉を聞くたびに、胸が熱くなる。 「ああ、この仕事をしていて良かった」と、心の底から思う。 そして、その感謝の言葉を栄養剤にして、また明日も馬車馬のように働くのだ。

でも、ここで少しだけ、残酷な計算をしてみてほしい。

1週間は、何時間だろうか? そう、168時間だ。

あなたの院に、週に1回通ってくれる熱心な患者さんがいたとする。 施術時間は、たっぷり1時間。あなたは全力を尽くし、その方の痛みを和らげ、体を整える。 患者さんは笑顔で帰っていく。

完璧な仕事だ。 あなたは治療家としての責任を、十分に果たしたように思える。

けれど、残りの時間は?

168時間引く1時間。 つまり、「167時間」

患者さんは、あなたの手の届かない場所で、あなたがいなくても生きていかなければならない。 その膨大な時間、彼らはどこで、何をしているのだろうか?

多くの時間は、自宅だ。職場だ。 あなたの院のベッドの上ではない、彼らの「日常」だ。

想像してみてほしい。

あなたの施術で楽になった腰が、翌朝、冷えたキッチンに立った瞬間に、またピキッと痛む瞬間を。 仕事でストレスがかかり、無意識に歯を食いしばって、首筋がガチガチに固まっていくデスクでの時間を。

夜、布団に入っても、「またあの激痛が襲ってきたらどうしよう」という不安で、なかなか寝付けない孤独な夜を。

その時、あなたはどこにいる? あなたは彼らのそばにいない。 助けてあげることも、声をかけてあげることもできない。

これが、私が「残酷な真実」と呼ぶものの正体だ。

私たちは、「週に1回、1時間」の施術で、患者さんを救った気になっている。 だが、彼らの人生の、ほんの**「1/168」**に関わったに過ぎないのだ。

残りの**「167時間」**、私たちは患者さんを、痛みのリスクと不安が渦巻く日常の中に、「放置」している。

言葉を選ばずに言えば、見捨てているのと同じではないだろうか。

「そんなこと言われても、物理的に無理だ」 「出張施術しろというのか? 私の体は一つしかない」

そう反論したくなる気持ちは、痛いほどわかる。 かつての私もそうだったから。

自分の時間を切り売りし、肉体の限界まで施術予約を詰め込むことが、患者さんへの最大の誠意だと信じて疑わなかった。

でも、ある時、気づいてしまったのだ。 過労で高熱を出し、一週間、院を閉めざるを得なくなったあの時。

【分身の派遣】 スマホから現れる「小さな先生」

予約のキャンセル電話が鳴り響く中、私は布団の中で天井を見つめながら絶望した。 「私が動けなくなったら、患者さんを守るすべは、何一つないのか」

数百人、数千人の患者さんの体を診てきた。 彼らは私を信頼してくれていたはずだ。 なのに、私が現場にいなくなった途端、その「信頼」は、何の役にも立たない、ただの思い出になってしまった。

彼らは、痛みに耐えかねて他の院を探すか、じっと我慢するしかなかった。 私は彼らに、「施術」以外の何も、手渡してこなかったからだ。

その時、私は悟った。 私が今までやってきたことは、本当の意味での「治療」ではなかったのかもしれない、と。

本当の治療とは、痛みを一時的に取り除くことだけではない。 患者さんが、自分の力で自分の体を守れるように導くこと。 そして、たとえ離れていても、「先生と繋がっている」という安心感を与えることではないだろうか。

今、あなたの院の受付を見渡してほしい。 そこに、何が置かれているだろうか?

「次回の予約はお早めに」というPOPだろうか。 それとも、物販のチラシだろうか。

もし、そこに、「あなたがいない167時間」を埋めるための「何か」が置かれていないとしたら。 あなたは、無意識のうちに、患者さんを「見殺し」にしているのかもしれない。

厳しい言い方をして申し訳ない。 でも、これは過去の自分への戒めでもあるのだ。

私たちは、もっと患者さんの「日常」に侵入しなければならない。 もちろん、ストーカーのように付きまとうわけではない。

デジタルの力を借りるのだ。 あなたの「分身」を、患者さんのスマホの中に送り込むのだ。

「デジタル」「動画」と聞いて、身構えないでほしい。 ユーチューバーのような完璧な編集なんていらない。

例えば、 **「痛みがぶり返した時の緊急セルフケア」**を、あなたのスマホで1分だけ撮って、そのままLINEで送るだけでもいい。 **「毎朝3分でできる再発予防ストレッチ」を解説した、既存の紙の資料を写真に撮って渡すだけでもいい。 あるいは、「不安な夜に聴く、先生からの大丈夫だよという音声メッセージ」**だけでもいい。

それらを、院内のPOPで、あるいはLINEで、手渡すことはできないだろうか?

「〇〇さん、今日は体が楽になりましたね。でも、明日が少し心配です。もし痛みが戻りそうになったら、この動画を見て、一緒にケアしましょうね。私がついていますから」

そう言って渡された「お守り」は、患者さんにとってどれほどの安心感になるだろうか。

彼らが自宅のリビングで、あなたの動画を見ながらストレッチをする。 その瞬間、あなたの「1時間」の施術は、彼らの日常に溶け込み、**「24時間365日」彼らを守り続ける「仕組み」**へと進化する。

そして、ここからが最も重要な話だ。

【24時間の安心】 枕元のスマホと、安らかな寝顔

そうやって「残りの167時間」も患者さんをサポートする仕組みを作ること。 それだけが、あなた自身を「将来の不安」から救い出す、唯一の道なのだ。

なぜか?

あなたの肉体は、いつか必ず衰える。 今日と同じ数の患者さんを、10年後も20年後も施術し続けることは、物理的に不可能だ。

しかし、あなたが作った「動画」や「コンテンツ」は歳をとらない。 あなたが寝ている間も、家族と旅行に行っている間も、あるいは病室にいる間も。 あなたの分身として、患者さんに価値を提供し、感謝され続ける。

そして、その感謝の対価として、「施術以外の売上」が生まれるようになる。 オンライン講座が売れるかもしれない。継続課金の会員制コミュニティができるかもしれない。

それが実現したとき、初めて、あなたは「止まったら終わる発電機」から解放される。 「自分が倒れても、収入がゼロにならない」という、本当の安心を手に入れることができるのだ。

もう一度、静まり返った深夜の院内で、自分自身に問いかけてみてほしい。

あなたは、患者さんの人生の「1/168」だけに関わって、満足する治療家でいたいか? それとも、残りの「167時間」も彼らに寄り添い、生涯にわたって健康を守り抜く、真のパートナーでありたいか?

その答えが後者であるならば。 明日、院のカウンターに置くものを、一枚の紙から変えてみることから始めてほしい。

それは、ただのPOPではない。 患者さんへの「愛」であり、あなた自身の未来への「切符」なのだから。

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