「先生、私たちは同じ穴のムジナです」 納品したら終わりのIT屋と、施術したら終わりの治療家。私たちが陥っている、貧乏暇なしの構造的欠陥について

2026/01/25
【見えない鎖】 ケーブルに縛られた「手」

カレンダーがめくられ、新しい月が始まる。 世間では「心機一転」などと明るい言葉が飛び交うその日が、私は昔から憂鬱で仕方なかった。

「ああ、またリセットだ」

先月どれだけ頑張ったとしても、どれだけ売上を上げたとしても。 1日になった瞬間、私の実績はきれいさっぱり「ゼロ」に戻る。

また一から、重たい岩を山頂まで押し上げるような日々が始まる。

その恐怖を、誰よりも知っているつもりだ。

かつての私は、自分を「ITのプロフェッショナル」だと自負していた。 クライアントのためにWebサイトを作り、複雑なシステムを組み、納品する。 「すごいですね」「助かりました」と感謝され、報酬を受け取る。

自分は手に職をつけ、デジタルというレバレッジの効く世界で生きている「勝ち組」だと思っていた。 汗水垂らして働く時代は終わったのだと、どこかで錯覚していた。

けれど、それは大きな間違いだった。

【無力な夜】 滲む天井と、鳴り止まない通知

ある冬の夜。 無理がたたって、39度を超える高熱を出して倒れたときのことだ。

節々が痛み、起き上がることさえできない。 枕元のスマホが、クライアントからの連絡でブーブーと震えている。 返信しなければならない。修正対応をしなければならない。 でも、指が動かない。頭が回らない。

熱に浮かされた頭で、天井のシミを見つめながら、ふと気づいてしまったのだ。

「あ、いま俺が作業を止めたら、来月の収入はゼロだ」

私がやっていたことは、資産作りではなかった。 ただ、パソコンという高価な道具を使っただけの「肉体労働」だったのだ。

工事現場で働く人が、現場に行かなければ日当が出ないのと同じ。 私もまた、キーボードを叩き続けなければ、一円も稼げない。

納品してしまえば、そこで関係は終わり。 積み上げたはずの信頼も、感謝も、次の月には持ち越せない。 私は「経営者」気取りでいたけれど、実態はただの「高級な日雇い労働者」に過ぎなかった。

その事実に気づいた瞬間、熱とは別の寒気が背筋を走った。 これまで「実績」だと思って積み上げてきたものは、砂の城のように脆かった。 自分自身が動けなくなった瞬間、すべてが崩れ去る。

その地獄の、一番深いところにいたのは、紛れもなく私だったのだ。

先生。 今、この話を他人事だと思って聞いていただろうか。

「私は治療家だ。IT屋とは違う」 そう思われたかもしれない。

でも、あえて言わせてほしい。 先生が今、抱えている恐怖の正体は、かつての私と同じではないだろうか。

朝から晩まで施術をし、患者さんと向き合う。 「ありがとう」と感謝され、痛みを取り除く。 それは尊い仕事だ。 けれど、その対価は「先生がその場にいて、手を動かすこと」でしか得られない。

もし明日、先生が倒れたら。 もし一ヶ月、院を休むことになったら。

その瞬間、収入は止まる。 患者さんは他の院へ流れていく。 先生が長年かけて築いてきた「信頼関係」という目に見えない貯金は、先生がベッドの横に立てなくなった瞬間に、引き出せなくなってしまう。

【損失の可視化】 指の隙間からこぼれる「黄金の水」

私たちは、似た者同士なのだ。 「技術」という名の肉体労働に依存し、止まることが許されないランナー。 その恐怖と隣り合わせで生きている。

だからこそ、私は先生に、同じ思いをしてほしくないのだ。 あの夜、私が天井を見上げながら味わった絶望を、先生には味わってほしくない。

私がそこから這い上がれたのは、働き方を変えたからではない。 「信頼」の保存先を変えたからだ。

今まで「納品したら終わり」「施術したら終わり」で、大気中に逃がしていたエネルギーを、ちゃんと「資産」として貯めることにしたのだ。

それが、私が提案している「仕組み」だ。

先生が汗水垂らして施術をし、患者さんから頂いた「ありがとう」という熱量。 それを、ただのお世辞として終わらせてはいけない。 その場限りの売上として消費してはいけない。

「先生の手」が届かない場所でも、患者さんと繋がり続けるための「配線」を繋ぐのだ。

難しく考えないでほしい。 具体的には、院内のカウンターに置く「一枚のPOP」から始まる。

そこに、先生の分身となる動画(簡単なセルフケア解説でいい)や、LINEへの入り口を用意する。

「家で痛みがぶり返したら、これを見てください」 そう言って手渡すだけでいい。

その瞬間、先生の「労働」は「資産」に変わる。

先生が寝ていても、家族と旅行を楽しんでいても。 患者さんはスマホの中の先生を見て救われる。 「先生のおかげで楽になりました」という感謝が、デジタルの世界に積み上がっていく。

やがてそれは、先生が施術をしていない時でも、 「オンライン講座」や「物販」といった形で、先生を助ける収益源になる。 先生が働けない時、先生の代わりに稼いでくれる「分身」になるのだ。

かつての私は、それを知らなかったから、ただひたすらにキーボードを叩き続け、体を壊した。 「ITを使っているから効率的だ」なんて思い上がっていたけれど、使いこなせていなかったのだ。

【損失の可視化】 指の隙間からこぼれる「黄金の水」

でも、今の先生なら間に合う。

先生の院には、毎日、私が喉から手が出るほど欲しかった「濃い信頼」を持った人たちが訪れている。 その信頼を、ざるで水をすくうようにこぼし続けるのは、もう終わりにしよう。

自分の技術に誇りを持つことと、自分を犠牲にすることは違う。

本当のプロフェッショナルは、自分が倒れても、顧客(患者さん)を守れる仕組みを持っている人のことを言うのだと、今の私は思う。

今度、院のレジを締めるとき、思い出してほしい。 今日の売上は、来月も約束されたものだろうか? それとも、またゼロから積み上げなければならない「労働の対価」だろうか?

もし後者なら。 まずは一枚、カウンターの紙を書き換えるところから、脱出の準備を始めよう。

それは、ただの紙切れではない。 先生自身を守るための、最初で最強の防具(保険)になるのだから。

最新の記事
カレンダー
前月
2026年2月
次月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28

    プロフィール

    黒岩倖光(くろいわ ゆきみつ)

    テクノロジーセラピスト
    ⚫︎やっていること
    AI・スマホ・タブレット・パソコン活用指導
    WEBマーケティングコンサルティング
    社長の頭に汗をかくマーケティング勉強会
    個人商店・医院・サロン向けショート動画・ライブ配信支援
    ⚫︎こんな人に届けたい
    アイデアはあるがどう伝えれば良いかわからない
    良い商品を扱っているのに、なかなか売れない
    人前に出て自分を売り込むのが苦手だ
    儲けることに罪悪感があって行動ができない
    Copyright (C) アイティコンサル光 All Rights Reserved.