「良かれと思って」やっているその熱心な説明が、実は患者さんの心を遠ざけている残酷な理由。あなたが今すぐやめるべき「説得」という名の暴力について

2026/01/26
【見えない鎖】 ケーブルに縛られた「手」

最後の患者さんを見送り、重たいシャッターを下ろす。 静まり返った院内で、ふと、渇いた喉をさする瞬間がある。

今日も、一生懸命話した。 骨盤の歪みがどう影響しているのか、なぜその痛みが起こるのか、家でどんなケアをすべきなのか。 模型を使い、図を描き、少しでも理解してもらおうと、言葉を尽くしたつもりだ。

患者さんは、神妙な顔で頷いていた。「はい」「なるほど」「わかりました」。 その言葉を信じて、満足感とともに一日を終える。

けれど、心のどこかで、冷たい違和感が渦巻いていることはないだろうか。

「本当に、伝わっているのだろうか?」

次に来院したとき、彼らはまた同じような姿勢で現れ、同じような痛みを訴える。 「先生に言われたストレッチ、忙しくてなかなか…」と、申し訳なさそうに笑う。

【無力な夜】 滲む天井と、鳴り止まない通知

その瞬間、あなたが積み上げた言葉の数々は、音を立てて崩れ去る。 徒労感。無力感。

そして、その奥底にある、じっとりとした恐怖。

もし明日、私が倒れて声が出なくなったら。 私のこの熱心な「説明」は、一体何の意味を持つのだろうか。 彼らの記憶に、何が残るのだろうか。

先生、どうか自分を責めないでほしい。 伝わらないのは、先生の説明が下手だからではない。 先生の熱意が足りないからでもない。

ただ単に、「人間の脳は、言葉だけでは動かないようにできている」からだ。

厳しい言い方になるが、あえて言わせてほしい。 あなたのその熱心な説明は、患者さんにとっては「雑音」でしかないかもしれない。 もっと悪い言い方をすれば、それは無意識の「説得」であり、彼らの脳に対する一種の「暴力」になり得る。

【損失の可視化】 指の隙間からこぼれる「黄金の水」

想像してみてほしい。 あなたがひどい頭痛で病院に行ったとする。 医師がCTスキャンの画像を指し示しながら、脳の構造や血管の走行、薬理作用について、専門用語を交えて30分も熱弁を振るったらどうだろうか。

「そんなことはどうでもいいから、この痛みを今すぐ止めてくれ」 そう叫び出したくならないだろうか。

患者さんが求めているのは、あなたの高尚な知識ではない。 「結果」だ。 痛みが消えるという体験、体が軽くなるという実感だ。

それなのに、私たちは不安だから、言葉で補強しようとしてしまう。 その結果、患者さんは言葉の洪水に溺れ、右耳から左耳へと情報を流してしまうのだ。

体験を伴わない情報は、記憶に残らない。 記憶に残らなければ、行動は変わらない。

行動が変わらなければ、彼らはいつまでもあなたの施術に依存し続け、あなたは永遠に「止まることが許されないランナー」として走り続けなければならない。

これが、私たちが陥っている「貧乏暇なし」の構造的欠陥だ。

では、どうすればいいのか? どうすれば、私たちの想いを、彼らの記憶に、そして人生に刻み込むことができるのか?

答えは、驚くほどシンプルだ。 そして、今までの「頑張り」を手放すことでもある。

「説明」をやめるのだ。 その代わりに、「体験」させるのだ。

言葉で伝えるのではなく、彼らの体と感覚に直接訴えかけるアプローチに変える。 もっと「ズル」をしていい。デジタルという道具に頼っていいのだ。

例えば、重要なセルフケアの動画を見てほしいとき。 「後で見ておいてくださいね」とURLを書いた紙を渡すだけでは不十分だ。それは「説明」だ。

そうではなく、「ちょっとスマホ出してもらっていいですか?」と声をかける。 そして、その場で彼らのスマホで動画を開き、最初の10秒だけ一緒に見るのだ。

「ほら、ここ。すごく気持ちよさそうでしょう? 今晩、お風呂上がりにこのポーズだけ、やってみてください」

これは「説明」ではない。「リハーサル」だ。 彼らの日常の中で、そのアクションが行われる未来を、その場で擬似体験させるのだ。

あるいは、院の公式LINEに登録してほしいとき。 「登録してください」と書いたPOPを指差すだけでは弱い。

「○○さん、もし明日、急に痛くなったら不安ですよね。だから今、私と繋がっておきましょう。ここ、ポチッと押してみてください。……はい、完了です。これでいつでも私がポケットの中にいますから、安心してくださいね」

ここまでやって、初めて彼らは「登録した」という「体験」と、「先生と繋がった」という「安心感」を手に入れる。

【資産の確立】 眠る主(あるじ)と、輝く台帳

人が動くのは、理屈に納得したときではない。 感情が動いたとき、そして「自分にもできそうだ」という具体的なイメージが持てたときだけだ。

明日からの診療で、少しだけ勇気を出してほしい。

喉まで出かかった「熱心な説明」を、グッと飲み込んでみる。 その代わりに、「ちょっと一緒にやってみましょうか」と声をかけて、彼らのスマホを操作させてみる。

最初は「お節介かな?」と不安になるかもしれない。 でも、やってみればわかる。

患者さんの反応は、劇的に変わるはずだ。

「あ、これなら私にもできそう!」 「先生、わざわざ設定してくれてありがとう!」

彼らの目がパッと輝き、その場の空気がフワッと軽くなる。 その瞬間、あなたの言葉は彼らの「自分事」に変わる。

その小さな「体験」の積み重ねが、やがて大きな変化を生む。 彼らは自立し始め、あなたへの依存度が下がる。 それは、あなたが「労働」から解放され、真の意味で彼らの健康を支えるパートナーへと進化する第一歩となる。

そして何より。 もし将来、あなたが何らかの理由で現場を離れることになったとしても。

彼らの中に残った強烈な「体験」の記憶と、彼らのスマホに残った「あなたの分身(デジタル資産)」は、消えることがない。 あなたが寝ている間も、あなたの代わりに彼らを支え続けるだろう。

もう、言葉で戦うのはやめよう。 「説得」という名の武器を置き、「体験」というギフトを贈ろう。

それが、患者さんを守り、そして最終的には、あなた自身の未来と収入を守る、最強の防具になるのだから。

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