受付の子に『可愛く作って』と頼んだ瞬間、あなたは100万円をドブに捨てています。その『親切な紙』が患者さんを拒絶するバリケードになる理由

2026/01/27
【視界の外】 焦る患者の目と、ピントの合わない「風景」

「先生、できました! 今流行りの手書き風フォントで作ってみたんです。可愛くないですか?」

受付スタッフの女性が、満面の笑みで一枚のPOPを持ってきた。 そこには、パステルカラーの背景に、可愛らしいイラストと、「公式LINEはじめました!お友達登録してね♪」という文字が踊っている。

「おお、すごいね。ありがとう、早速カウンターに置こうか」

あなたは彼女を労い、その出来栄えに満足する。 業者に頼めば数万円かかるところが、スタッフに頼めばタダ同然だ。 経費削減できたし、院内の雰囲気も明るくなった。 自分は経営者として、賢い選択をした。

……もし、あなたが今、そう思っているとしたら。 私はあなたに、身の毛もよだつようなホラー映画の結末をお伝えしなければならない。

その「可愛くて親切な紙」は、今この瞬間から、あなたの院の将来の売上をドブに捨て続ける「排水溝」として機能し始めているからだ。

誤解しないでほしい。 一生懸命作ってくれたスタッフの方に、罪は1ミリもない。 彼女は、あなたの「可愛く作って」という指示通り、素晴らしい「装飾」を作っただけだ。

罪があるのは、その紙切れ一枚の持つ「恐ろしい影響力」を甘く見ている、経営者としてのあなたの認識だ。

【見過ごされた未来】 待合室の椅子に座る「半透明の患者」

なぜ、素人が作ったPOPではダメなのか。 デザインがダサいからではない。むしろ、今の時代、誰でも綺麗なものは作れる。

致命的な欠陥は、そこに「人間の行動心理」が設計されていないことだ。

想像してみてほしい。 施術を終えた患者さんは、体が楽になった安堵感と、これから帰って夕飯を作らなければという焦燥感の中にいる。 そんな彼らにとって、カウンターに置かれた「LINEはじめました」という可愛らしいお知らせは、何に見えているか。

答えは、「風景」だ。 カレンダーや観葉植物と同じ、意味を持たない背景の一部。 あるいは、「登録してね」というお願いは、忙しい彼らにとって「面倒なタスク」の追加でしかない。

その結果、何が起きるか。 毎日、本当なら登録してくれたはずの患者さんが、そのPOPをスルーして帰っていく。

たかが一人、と思うかもしれない。 だが、その一人がリピーターになり、ファンになり、数年にわたって通ってくれたとしたら? その「生涯顧客価値(LTV)」は、30万、50万、あるいは100万円にもなるかもしれない。

【行動変容の瞬間】 強い言葉に、思わず止まる「足」

その100万円の価値を持つ種を、POPが機能していないという理由だけで、毎日ドブに捨てているとしたら? それは「経費削減」どころか、「経営自殺」に近い。

プロの仕事とは、デザインを綺麗にすることではない。 「風景」を「自分への警告」に変えることだ。

例えば、プロならこう考える。

× 素人の思考(装飾): 「公式LINEはじめました。お得な情報をお届けします」 → 誰も見ない。

○ プロの思考(心理操作): 「痛みが戻るのが怖い方へ。今夜寝る前の3分だけ、私にください」 → 「えっ、私のこと?」と足が止まる。

この言葉を見た瞬間、それは「面倒なタスク」ではなく、「手に入れないと損をするお守り」に変わる。 患者さんは、慌ててスマホを取り出し、QRコードを読み込むだろう。

この「言葉の差」こそが、売上の差だ。

スタッフの優しさを無駄にしないでほしい。 彼女が作った「可愛い紙」は、残念ながら患者さんの心には届かない。 それは、戦場に「お花畑」を作るようなものだ。

【嵐の中の命綱】 輝くロープと、支えられる手

先生。 カウンターにあるその紙は、ただの紙ではない。

それは、先生が明日、もし倒れて動けなくなったとしても。 先生の代わりに患者さんのポケットの中に飛び込み、関係を繋ぎ止め、感謝とお金を運び続けてくれる**「命綱」**なのだ。

その命綱の設計を、「絵が得意だから」という理由だけで、デザインの素人に任せていいはずがない。 それは、心臓外科の手術を「手先が器用だから」という理由で、美大生に頼むようなものだ。

数万円の制作費を惜しんで、将来の数百万円、数千万円を捨てるのは、もう終わりにしよう。

今すぐ、院のカウンターを確認してほしい。 そこに置かれているのは、患者さんの足を止め、スマホを取り出させ、強制的に未来を変える「装置」だろうか? それとも、ただ可愛らしく微笑んで、患者さんをスルーさせてしまう「壁紙」だろうか?

もし後者なら。 その紙を剥がす勇気を持つことが、あなたの資産を守る最初の仕事になる。

たかが紙切れ一枚。 されど、その紙切れ一枚が、あなたの老後と、スタッフの給料と、愛する家族の生活を背負っているのだから。

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