あなたの「ゴッドハンド」は、平時には最高の価値かもしれない。だが有事には、患者を路頭に迷わせる「最大の凶器」に変わる。
「先生じゃなきゃ、ダメなんです」
その言葉は、まるで麻薬だ。
かつての私も、あなたと同じだった。 その甘美な響きに酔いしれ、それを「信頼の証」だと信じて疑わなかった。
私はITのプロとして、クライアントのために「私にしか書けないコード」を書き続けていた。 市販のツールなんて使わない。完全オーダーメイドのプログラム。 それこそが職人としての誠実さであり、誇りだった。
「何かあれば、私が24時間いつでも対応しますから」
そう言って胸を叩くことが、最高のサービスだと思っていた。 私の頭の中にある設計図は、誰にも真似できないブラックボックス。 それは私にとって、自分の存在価値そのものだった。
しかし、その「誇り」が、実はクライアントの首を真綿で絞める「凶器」に変わることに、私は気づいていなかった。
あの、悪夢のような年末の夜までは。
繁忙期の真っ只中だった。 連日の徹夜がたたり、私は40度の高熱を出して倒れた。 意識が朦朧とし、天井がぐるぐると回る中、枕元のスマートフォンが狂ったように震え始めた。
ブブブ、ブブブ……。
画面には、担当していたクライアントの名前。 嫌な予感がした。 這うようにして電話に出ると、悲痛な叫び声が聞こえた。
「黒岩さん! 画面が動かないんです! お客さんが買えないんです! どうすればいいですか!?」
私が構築した、あの「私にしか直せないシステム」が、最も重要なタイミングでクラッシュしたのだ。
どうにか指示を出そうとした。 だが、言葉が出てこない。思考がまとまらない。 指一本、動かせない。
パスワードも、直し方も、すべて私の「脳内」にしかない。 マニュアルなんてない。 私が現場に行き、私がキーボードを叩かなければ、何も解決しない。
「黒岩さん! 早く! 今この瞬間も、数百万円の損失が出てるんですよ!」
受話器の向こうの怒号と、自分の荒い呼吸音が混ざり合う。 私はただ、「すみません、動けません……」と繰り返すことしかできなかった。
その夜、クライアントは莫大な損失を出した。 その金額は、私がそれまで積み上げてきた「信頼」を一瞬で消し飛ばした。
熱が下がり、ようやく動けるようになった後、私は土下座をする覚悟でクライアントの元へ向かった。
しかし、社長は静かだった。 その静けさが、何よりも怖かった。
彼は、私の目を真っ直ぐに見て、こう言った。
「黒岩さん、あなたの技術は素晴らしいよ。それは認める」
そして、一呼吸置いて、私の心臓を貫く言葉を放った。
「でも、あなたが倒れたら共倒れになるような『素晴らしい技術』なら、もう怖くて使えないよ」
その言葉は、私の職人としてのプライドを、粉々に砕いた。
私は思い上がっていたのだ。 「私にしかできない」ことは、平時には最高の付加価値かもしれない。 だが、ひとたび有事になれば、それはクライアントを地獄へ道連れにする最大のリスクになる。
私は自分の技術を誇示するあまり、クライアントの「安心」を無視していた。 「自分がいなければ回らない状態」を作ることは、信頼ではなく、ただの「依存」だ。 もっとも無責任で、不誠実な商品設計だったのだ。
今、この画面を見ている先生。 この話は、決して他人事ではないはずだ。
少しだけ、想像してみてほしい。
【あなたの院のリスク診断】
□ あなたが1週間寝込んだら、売上はゼロになりますか?
□ 施術のノウハウは、すべてあなたの「頭の中」だけにありますか?
□ 患者さんが自宅で痛くなった時、あなたに電話する以外に解決策はありませんか?
もし、一つでもチェックがついたなら。 あなたは今、かつての私と同じ「時限爆弾」を抱えている。
もし明日、あなたが倒れたら。 「先生しかいない」と信じていた患者さんは、激痛を抱えたまま、路頭に迷うことになる。 あなたが「24時間対応」できなくなった瞬間、彼らの希望は絶望に変わる。
それは、本当に「誠実な治療家」の姿だろうか?
私はあの日以来、考え方を180度変えた。 「私がいなくても回る仕組み」を作ることに、全精力を注ぐようになった。
自分の知識を動画にし、テキストにし、誰でも使えるツールに落とし込んだ。 私が寝ていても、クライアントのトラブルを解決できる「デジタルな分身」を作った。
これは決して「手抜き」ではない。 クライアントのビジネスを守るための、プロとしての「責任」だ。
先生、あなたにもお願いしたい。
どうか、「ゴッドハンド」であると同時に、 「自分がいなくても患者さんが守られる仕組み」を持つオーナーになってほしい。
あなたの素晴らしい施術技術を、すべて「ブラックボックス」の中に閉じ込めないでほしい。 その知識を、スマホで撮影し、言葉にし、あなたが触れられない場所にいる患者さんにも届く「形(デジタル資産)」にしてほしい。
「先生の動画を見て、痛みが和らぎました」 「先生が休んでいる間も、このガイドブックのおかげで不安じゃありませんでした」
そう言われる準備をしておくこと。 それが、あなたが倒れた時に、患者さんを「被害者」にしないための唯一の方法だ。
「私にしかできない」という甘い言葉の裏に潜む、鋭利な刃物に気づいてほしい。 かつての私のように、大切な人の信頼を、自分の体調一つで裏切ってしまう前に。
【問いかけ】 あなたは今、「自分の分身」を持っていますか? それとも、すべてを「自分の体」だけで背負っていますか?
コメント欄で教えてください。 (「分身の作り方」に興味がある方は、保存ボタンを押しておいてください)