「先生、家でどうすればいいですか?」その質問に無料で答えているうちは、あなたは永遠に“ただのいい人”で貧乏なままだ。

2026/02/07
【限界の夜】電卓と湿布、孤独な戦い

「先生、お風呂上がりに何をしたらいいですか?」 「枕はどんなのがいいですか?」 「この痛み、冷やすべきですか? 温めるべきですか?」

施術が終わった後の、会計待ちの時間。 あるいは、患者さんが靴を履いている、あの帰り際の数分間。

あなたは、この質問にどう答えているだろうか?

かつての私は、満面の笑みで答えていた。 「あ、それはですね、ここをこう伸ばして……」 身振り手振りを交え、時には解剖図まで持ち出して、丁寧に、熱心に、そして「無料」で解説していた。

患者さんは「へぇ〜! 勉強になります! ありがとうございます!」と嬉しそうに帰っていく。 その笑顔を見て、私は「今日もいい仕事をしたな」と充実感に浸っていた。

私は自分を「親切で誠実な治療家」だと信じていた。 金儲け主義の他の院とは違う、患者さんの利益を第一に考える善人だと。

だが、それは間違いだった。 致命的な、経営的な自滅行為だった。

【視点の転換】タブレットの中に見つけた「資産」

私は「善人」なんかじゃなかった。 ただの「自分の価値を安売りする、臆病な浪費家」だったのだ。

ある雨の日のことだ。 予約がキャンセルになり、ぽっかりと時間が空いた院内で、私はふと電卓を叩いて青ざめた。

今月の売上、ギリギリだ……。 体の節々は悲鳴を上げている。指は変形しつつある。 朝から晩まで、休憩なしで体を酷使して、それでも手元に残るお金はこれだけか?

その時、ふと、昨日患者さんに話した「無料アドバイス」の内容を思い出した。 「腰痛を劇的に改善する、寝る前の3分ルーティン」。

あれは、私が数百万の投資と、10年の臨床経験を経て編み出した、極めて効果の高いノウハウだ。 それを私は、立ち話のついでに、タダで喋ってしまった。

もし、あれを「商品」として売っていたら? もし、あの知識を動画にまとめ、「自宅ケアプログラム」として提供していたら?

私はハッとした。

私は、スーパーマーケットで言えば、最高級のステーキ肉を「試食コーナー」で全部配ってしまっているようなものだ。 「美味しいでしょ? 良かったらまた来てね」と言って、肉を無料で配り、客は満腹になって帰っていく。 そして私は、空っぽの冷蔵庫の前で「なぜ売上が上がらないんだ」と嘆いている。

なんて愚かなんだ。

さらに、もっと残酷な現実に気づいた。 私が無料で教えたあのアドバイス、患者さんは本当に実践しているだろうか?

答えは「NO」だ。

次に来院した時、「先生、教わった通りにやりました!」と言う患者さんは、10人に1人もいない。 「あ、忙しくて忘れちゃいました」「やり方、なんでしたっけ?」と笑って誤魔化されるのがオチだ。

なぜか? 「無料」だからだ。

人は、痛みを伴わない情報(対価を払っていない情報)に、価値を感じない。 「タダで聞いた話」は、駐車場の車に乗り込む頃には忘れている。

つまり、私は「親切心」で無料で教えていたつもりだったが、 結果として、患者さんに「実践しない言い訳」を与え、彼らの治癒を遅らせていただけだったのだ。

【プロの提案】自信を持って差し出す「処方箋」

無料で教えることは、優しさではない。 お互いにとっての「損失」でしかなかった。

その事実に打ちのめされた私は、恐怖に震えた。

私は今、自分の「肉体労働(施術)」だけを商品にしている。 60分揉んで、6,000円。 それが私の限界だ。

もし明日、私が交通事故で腕を骨折したら? もし、過労で倒れて入院したら?

その瞬間、私の収入は「ゼロ」になる。 私がベッドで寝ている間、誰が家族を養う? 誰が院の家賃を払う?

誰も払ってくれない。 私が積み上げた「知識」や「ノウハウ」は、私の頭の中に閉じ込められたまま、一銭も生まないまま、私と一緒に腐っていくだけだ。

「先生、家でどうすればいいですか?」

その質問は、実はチャンスだったのだ。 患者さんが「お金を払ってでも知りたい」と思っている、喉から手が出るほど欲しい「解決策」への入り口だったのだ。

私はその日から、変わる決心をした。 「先生、家でどうすればいいですか?」と聞かれたら、こう答えることにした。

「〇〇さん、その症状にぴったりの、自宅でできる特別なケア方法があります。 口で説明すると忘れちゃうし、間違ったやり方だと逆効果なので、私が解説した動画プログラムを用意してあるんです。これは、家に持ち帰れる『処方箋』です」

「処方箋」。 そう呼ぶだけで、私の心のブロックは消えた。 薬にお金を払うのが当たり前なら、治すための情報にお金を払うのも、プロとして当たり前のことだ。

最初は怖かった。 「守銭奴」だと思われるのが怖かった。

しかし、患者さんの反応は驚くべきものだった。

「えっ、本当ですか! ぜひ欲しいです!」 「忘れないで見返せるのが欲しかったんです!」

彼らは喜んで対価を支払ってくれた。 そして何より、お金を払った患者さんは、「元を取ろう」として真剣に動画を見て、毎日実践してくれた。 結果、治りが圧倒的に早くなり、さらに感謝されるようになった。

【未来の安息】自分がいなくても回る「仕組み」

今、私の院には「もう一人の私」がいる。 それは、私が寝ている間も、休日で子供と遊んでいる間も、患者さんにアドバイスをし続け、売上を上げ続けてくれる「デジタルコンテンツ」という分身だ。

私がもし倒れても、この分身たちが、私の家族を守ってくれる。 その安心感が、私の施術に余裕をもたらし、結果として院全体の質を高めている。

先生、あなたに言いたい。

「無料で教えるのが誠実さ」という呪いから、今すぐ解き放たれてほしい。 あなたのその頭の中にある知識は、あなたが命を削って手に入れた「財産」だ。

それを安売りしてはいけない。 タダで配ってはいけない。

「先生、どうすればいいですか?」

次にそう聞かれた時、それが運命の分かれ道だ。 そこでまた「いい人」の仮面を被って、資産をドブに捨てるのか。 それとも、プロとして「価値ある処方箋」を提供し、患者さんの本気スイッチを押すのか。

選択肢は、あなたの目の前にある。 あなたの知識に、正当な値段をつけろ。 それが、真の意味で患者さんを救う、プロの責任なのだから。


【問いかけ】 正直に教えてください。 あなたは今日、いくら分の情報を「タダ」で配ってしまいましたか?

自分への戒めとして、コメント欄に「今日は〇〇円捨てました」と書き込んでみてください。 その痛みが、明日からのあなたを変えるはずです。

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    黒岩倖光(くろいわ ゆきみつ)

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